お正月に家族や親戚と集まって遊ぶイメージのある「いろはかるた」は、実際に遊んだことのある人も多いのではないでしょうか。
「いろはにほへと」で始まることわざと、絵札にはそのことわざの内容を表した絵が書かれていますが、実は使用されていることわざが地域によって違うともいわれています。
そこで今回は、地域ごとに内容が違うと言われているいろはかるたの内容を、江戸・京都・大阪の三種類をご紹介します。
いろはかるたとは何?
”かるた”と聞いて最初に思い浮かべるのは、子供の頃に遊んだ「あいうえお」の仮名で構成された読み札と絵札の各46枚ずつの「あいうえおかるた」という人も多いでしょう。また、ここ数年徐々に人気を高めてきている、小倉百人一首を使用した競技かるたという方もいるかもしれません。
いろはかるたとは、「いろはにほへと」の47文字に「京」の文字を加えた48文字で構成されており、それぞれを頭文字としたことわざがあてはめられた歌かるたです。
江戸時代中期に上方で作られたと言われているいろはかるたは、江戸や各地方へ広がっていき、昭和初期ごろまでは子供の正月遊びの定番とされていました。
地域によって内容が違う
https://twitter.com/l_seika/status/1604749216110497793
いろはかるたの特徴として、江戸・京都・大阪などの地域によって内容が異なっており、それぞれ地方の特色が現れている「郷土かるた」が存在します。
江戸で使用されていたいろはかるたは、「犬も歩けば棒に当たる」で始まるものがよく知られているため、「犬棒かるた(江戸かるた)」とも呼ばれています。
地域ごとの違いとは
https://twitter.com/Bontoro7/status/1359392170461962241
地域ごとに異なるいろはかるたの内容を、江戸・京都・大阪それぞれ一覧を表にまとめました。
見ていただければわかる通り、中には同じ内容の仮名もいくつか存在しますが、ほとんどが異なることわざが使用されています。
仮名 | 江戸 | 京都 | 大阪 |
い | 犬も歩けば棒に当たる | 一寸先は闇 | 一を聞いて十を知る |
ろ | 論より証拠 | 論語読みの論語知らず | 六十の三つ子 |
は | 花より団子 | 針の穴から天を覗く | 花より団子 |
に | 憎まれっ子世にはばかる | 二階から目薬 | 憎まれっ子頭堅し |
ほ | 骨折り損のくたびれ儲け | 仏の顔も三度 | 惚れたが因果 |
へ | 屁を放って尻すぼめる | 下手の長談義 | 下手の長談義 |
と | 年寄りの冷や水 | 豆腐に鎹 | 遠くの一家より近くの隣 |
ち | ちりも積もれば山となる | 地獄の沙汰も金次第 | 地獄の沙汰も金次第 |
り | 律儀者の子沢山 | 綸言汗のごとし | 綸言汗のごとし |
ぬ | 盗人の昼寝 | 糠に釘 | 盗人の昼寝 |
る | 瑠璃も玻璃も照らせば光る | 類を以て集まる | 類を以て集まる |
を | 老いては子に従え | 鬼も十八 | 鬼の女房に鬼神 |
わ | 割れ鍋に綴じ蓋 | 笑う門には福来る | 若い時は二度無い |
か | かったいのかさうらみ | 蛙の面に水 | 陰うらの豆もはじけ時 |
よ | よしの髄から天井のぞく | 夜目遠目笠のうち | 横槌で庭掃く |
た | 旅は道連れ世は情け | 立て板に水 | 大食上戸餅食らい |
れ | れう薬は口に苦し | 連木で腹切る | 連木で腹切る |
そ | 総領の甚六 | 袖の振り合わせも他生の縁 | 袖の振り合わせも他生の縁 |
つ | 月とすっぽん | 月夜に釜を抜かれる | 爪に火を点す |
ね | 念には念を入れよ | 猫に小判 | 寝耳に水 |
な | 泣きっ面に蜂 | なす時の閻魔顔 | 習わぬ経は読めぬ |
ら | 楽あれば苦あり | 来年の事を言えば鬼が笑う | 楽して楽知らず |
む | 無理が通れ場道理引っ込む | 馬の耳に風 | 無芸大食 |
う | 嘘から出た真 | 氏より育ち | 牛を馬にする |
ゐい | 芋の煮えたも御存じない | 鰯の頭も信心から | 炒り豆に花が咲く |
の | 喉元過ぎれば熱さを忘れる | 鑿と言えば槌 | 野良の節句働き |
お | 鬼に金棒 | 負うた子に教えられて浅瀬を渡る | 陰陽師身の上知らず |
く | 臭い物に蓋をする | 臭い物に蝿がたかる | 果報は寝て待て |
や | 安物買いの銭失い | 闇に鉄砲 | 闇に鉄砲 |
ま | 負けるが勝ち | 蒔かぬ種は生えぬ | 待てば海路の日和あり |
け | 芸は身を助く | 下駄と焼き味噌 | 下戸の建てた蔵は無い |
ふ | 文はやりたし書く手は持たぬ | 武士は食わねど高楊枝 | 武士は食わねど高楊枝 |
こ | 子は三界の首枷 | これにこりよ道才坊 | こころざしは松の葉 |
え | 得手に帆を上ぐ | 縁と月日 | 閻魔の色事 |
て | 亭主の好きな赤烏帽子 | 寺から里へ | 天道人殺さず |
あ | 頭隠して尻隠さず | 足元から鳥が立つ | 阿呆につける薬はない |
さ | 三遍回って煙草にしょ | 竿の先に鈴 | 触らぬ神に祟りなし |
き | 聞いて極楽見て地獄 | 鬼神に横道なし | 義理と褌かかねばならぬ |
ゆ | 油断大敵 | 幽霊の浜風 | 油断大敵 |
め | 目の上のこぶ | 盲の垣のぞき | 目の上のこぶ |
み | 身から出た錆 | 身は身で通る | 蓑売りの古蓑 |
し | 知らぬが仏 | しはん坊の柿のさね | 尻食へ観音 |
ゑえ | 縁は異なもの味なもの | 縁の下の舞 | 縁の下の力持ち |
ひ | 貧乏暇なし | 瓢箪から駒 | 貧僧の重ね食い |
も | 門前の小僧習わぬ経を読む | 餅は餅屋 | 桃栗三年柿八年 |
せ | 急いては事を仕損じる | せんちで饅頭 | 背戸の馬も相口 |
す | 粋は身を食う | 雀百まで踊り忘れぬ | 墨に染まれば黒くなる |
京 | 京の夢大阪の夢 | 京に田舎あり | なし |
この表にまとめたものは、伝統的な札の一例です。時代の変化に合わせて一部の札が差し替えられている場合もあるため、この表に書いてあるものが全てではないことには注意が必要です。
まとめ
今回はいろはかるたとはどの様なものなのか、地域による違いなどについてご紹介しました。
かつては子供の正月遊びの定番として各家庭で楽しまれていた「いろはかるた」は、「いろは」の47文字と、「京」の文字を加えた48文字で構成された歌かるたです。
現代では「あいうえおかるた」や、競技かるたに使用される「小倉百人一首」の方が良く目にする機会があるかと思いますが、古典的ないろはかるたには、その地域によってことなることわざが使用されているという特徴があります。
自分の住んでいる地域では、どのような内容のいろはかるたがあるのかを調べてみるのも面白いですね。