人気漫画や映画「ちはやふる」の大ヒットにより、ダイナミックで熱いスポーツとしての側面が広く知られるようになった競技かるた。畳の上で激しく札を払う姿は「畳の上の格闘技」とも称され、多くの人々を魅了しています。この記事では、気になる競技かるたのプロの年収実態や、「名人」「クイーン」になるための道のりや競技の基礎知識までを詳しく解説していきます。
競技かるたに「プロ」は存在する?
将棋や囲碁の世界には、対局料や賞金で生計を立てる「プロ棋士」という職業が存在します。では、競技かるたの世界にも同様のプロ制度はあるのでしょうか。結論から申し上げますと、現在のところ競技かるたには、将棋や囲碁のような明確な「プロ制度」は存在しません。
全日本かるた協会に所属していても、協会から給料が支払われるわけではなく、むしろ年会費や大会参加費を支払って活動しているのが一般的です。したがって、厳密な意味での「職業としてのプロ選手」はいないと言われています。
競技かるたのプロの年収事情
プロ制度がない以上、競技かるたのプロの年収という概念自体が成立しにくいのが現状です。しかし、競技かるた界の最高峰である「名人」や「クイーン」のタイトル保持者であれば、何らかの収入があるのではないかと思うかもしれません。
しかし名人戦やクイーン戦で勝利しても、獲得できるのは名誉ある称号やトロフィー、副賞が中心であり、生活を支えられるような高額な賞金が出ることはほとんどないそうです。一部の大きな大会では賞金が出るケースも増えてきているようですが、それだけで年収と呼べるほどの額には届きません。
大会参加費や遠征費は基本的に自己負担
むしろ、トップ選手として活動を続けるには、相応の出費が必要になります。全国各地で開催される大会に参加するための交通費や宿泊費、大会の参加登録料などは、基本的にすべて自己負担となることが多いようです。強くなればなるほど遠征の機会も増えるため、競技かるたを続けることは経済的な負担も伴う趣味であると言えるかもしれません。
それでも多くの選手が畳の上で戦い続けるのは、お金以上の情熱や、競技そのものへの愛があるからこそだと言えるでしょう。
プロだけで生活するのが難しい理由
競技だけで食べていくことは非常に困難ですが、関連する活動で収入を得ているケースは皆無ではありません。近年、eスポーツやマイナースポーツのアスリートが企業とスポンサー契約を結ぶケースが増えています。競技かるたの世界でも、極めて稀ではありますが、個人的にスポンサーがついている選手もいるかもしれません。
しかし、競技かるたはテレビ中継される機会が年に数回(名人・クイーン戦など)に限られており、企業の広告塔としての露出効果が見込みにくいという側面があります。そのため現時点ではほぼいないと考えられます。
メディア出演や講演活動による収入の可能性
トップ選手や、元名人・元クイーンといった肩書きを持つ方であれば、その知名度を活かして収入を得ることは可能です。例えば、カルチャーセンターやかるた会での指導、競技かるたのルール指導や書籍の執筆、メディア出演などが挙げられます。また、「ちはやふる」のようなメディアミックス作品の監修や指導といった仕事が発生することもあります。
ただし、これらもあくまで「副業」や「臨時収入」の範囲に留まることが多く、これ一本で生計を立てている人はごく僅かだと言われています。
競技かるたのトップ選手になるには?段位と昇級の仕組み
プロ制度はないものの、競技かるたには実力を示す「段位」があり、トップを目指すための明確な階段が用意されています。競技かるたの大会は、実力に応じてA級からE級までの5つのクラスに分かれており、概要や参加資格などの目安は以下の通りになっています。
| 階級 | 概要 | 参加資格の目安 |
| A級 | 四段以上 | 名人・クイーンを目指すトップ層 |
| B級 | 三段 | 地方大会の上位入賞者レベル |
| C級 | 二段 | 初段獲得者 |
| D級 | 初段 | 無段者およびE級で所定の成績を収めた者 |
| E級 | 無段 | 初心者・大会初参加者 |
A級選手になるまでの厳しい道のり
最高ランクであるA級(四段以上)になるには、B級の大会で優勝、もしくは準優勝を2回するといった厳しい条件をクリアしなければなりません。A級選手は全国でも一握りの存在であり、ここに至るまでには数年から十数年の修練が必要だと言われています。
そして、このA級選手だけが、最高峰のタイトルである「名人戦」「クイーン戦」の予選に出場する資格を得ることができます。つまり、トップ選手への入り口に立つだけでも、相当な努力と才能が求められるのです。
名人戦・クイーン戦への道!日本一を決める戦い
競技かるたの選手にとって最高の栄誉である「名人位(男性)」と「クイーン位(女性)」。このタイトルを獲得するためのプロセスは、非常に過酷でドラマチックです。名人・クイーンへの挑戦権を得るためには、まず年に一度開催される予選を勝ち抜く必要があります。予選は東日本と西日本に分かれて行われ、それぞれの優勝者が決定します。
その後、東日本の代表と西日本の代表が直接対決する「挑戦者決定戦」が行われ、その勝者が晴れて現役の名人・クイーンへの挑戦権を獲得するようになっております。
近江神宮で行われる頂上決戦
タイトル戦は、毎年1月に滋賀県の近江神宮にある「近江勧学館」で行われます。ここは「かるたの甲子園」とも呼ばれる聖地です。試合は先に何勝した方が勝ちという形式(通常は5番勝負で3勝先取など)で行われ、朝から夕方まで一日がかりで戦います。張り詰めた空気の中、コンマ数秒を争う戦いが繰り返される様子は、まさに死闘と呼ぶにふさわしい光景です。
この戦いを制した者だけが、その年の名人・クイーンとして歴史に名を刻むことになります。
まとめ
今回は多くの方が疑問に思う、競技かるたのプロの年収というテーマを中心に、プロ制度の実態やトップ選手への道のりについて解説しました。残念ながら競技かるたでプロとして年収を得て生活することは現状では難しいですが、それ以上に熱い情熱を持った選手たちが、本業と両立しながら頂点を目指しています。皆さんもぜひ百人一首を覚えるところから始めてみてはいかがでしょうか。









