花札は、その季節を表した植物や動物、行事などが各札に描かれています。
その中でも11月の札は、他の月の札とは少し雰囲気の違う独特な絵柄をしており、特に赤色と黒色で表現されたカス札の『鬼札』は何を表しているのか疑問に思った人も多く、花札の意味は実は怖いのではないかと噂されることもしばしば。
そこで今回は、11月の花札『鬼札』に描かれている絵や由来について詳しくご紹介します。
花札の11月は『柳』
花札は、1月〜12月までの月で表されており、その季節を表した植物や動物が描かれています。
中でも特に気になるのが11月の札で、この季節の札には『柳』が描かれています。
花札の中で唯一人が描かれている柳の光札には、「小野道風(おののみちかぜ)」という人物が描かれており、江戸時代(1856年)に書かれた三浦梅園の『梅園叢書』の中のお話を元に描かれたそうです。
しかし、もともとは小野道風ではなく、雷雨の中で傘を差して走る男の人が描かれていました。
また柳のタネ札には、黄色い鳥が描かれていますが、こちらはツバメとなっています。
ツバメは黄色い鳥ではないはずですが、絵柄を鮮やかにするために”あえて”黄色いデザインにしたという説があります。
そして1番気になる赤や黒で表現された柳のカス札は『鬼札』と呼ばれ、その独特な雰囲気から少し不気味に感じる人も多いかもしれません。
11月のカス札『鬼札』とは
この季節だけにある何故か赤や黒で表現されたよく分からない不気味な絵柄。この札は『鬼札』と呼ばれ、花札では通常「カス札」として扱いますが、ゲームによってはトランプのジョーカーのような役割があります。
赤と黒の色使いから少し怖いイメージがあり、花札の意味は実は怖いのではないかと感じるのも、この鬼札のせいかもしれません。
しかしよく見ると、細かい絵柄が描かれています。
一体何が描かれているのでしょうか。
『鬼札』には何が描かれている?
鬼札は、ぱっと見では赤と黒のシンプルな絵柄に見えますが、よく見てみると様々な絵柄が描かれています。
- 柳の葉
- 鬼(雷神)の手
- 雷光
- 雨
- 太鼓
激しい雷雨の中、札の右上から伸びている鬼(雷神)の手が、左下にある太鼓を掴もうとしている場面です。
非常に分かりにくいですが、札の左右にある黒塗りの部分が柳の葉を表しているようです。
なぜこんな分かりにくい絵柄になったのでしょうか。
この絵柄になった由来とは?
もともと柳の札には「雨」の意味はなく、柳の葉が2枚描かれているだけのシンプルな物でした。
その後、柳の札の1枚に雷雨の中で傘を差す人物が描かれ、柳=雨のイメージが付きます。
昔は雨という発想から、光札(花札で1番点数の高い札)の効果を消す(雨に流す)「消し札」という役割がありました。
※傘を差す男の人の札を含め柳の札を4枚集めると、光札の役を流すルールがあった。
そして同時に雷雨=雷光ということで、傘を差す人物の札が光札として扱われるようになり、その後現在の小野道風の絵柄へと変更されました。
絵柄が小野道風に変わったことがきっかけとなり、「消し札」の機能を他の札に持たせようという事になります。
そこで消し札として判別しやすくするため、柳の札の背景を赤く塗りましたが、それだけでは元になった「雨」が分かりにくいという事で、雨のイメージを持たせるために雷光や雨、雷神の太鼓や手をデザインした札が登場しました。
まとめ
各季節を表現した絵柄の花札ですが、11月の『鬼札』は赤や黒の色使いから独特な雰囲気で少し不気味に感じ、花札の意味は実は怖いのではないかと思ってしまう人も多いかもしれません。
しかし鬼札にもしっかりとした由来があり、知っていればそれほど怖い札ではありませんでした。
是非皆さんも花札の絵柄を楽しみながら遊んでみてはいかがでしょうか。